住まい
建物状況調査(インスペクション)は、いつ・誰に頼むか
中古住宅を買う前に、専門家に建物を見てもらう仕組みがあります。ただ、買う側が頼むには売主の承諾が要り、調べない部分もあります。国土交通省のQ&A(令和6年4月1日現在)にもとづいて、頼む前に知っておくことを整理します。
建物状況調査とは
建物状況調査は、中古住宅の基礎や外壁などに生じているひび割れ、雨漏りといった劣化や不具合の有無を、目視や計測で調べるものです。宅地建物取引業法に位置づけられた調査で、国の登録を受けた講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が、国の定めた基準に沿って行います。
国土交通省のQ&Aは、この調査を「瑕疵がないことを保証するものではありません」と説明しています。調査した時点の状態を把握するためのもので、合格・不合格を決めるものではありません。
「ホームインスペクション」「住宅診断」といった名前のサービスが、すべてこの建物状況調査に当たるわけではありません。講習を修了した建築士が、国の基準に沿って行うものだけが該当します。依頼する前に、提供元に確認してください。
調べる範囲と、調べない範囲
調査の対象は、建物の構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分です。Q&Aでは、一般的な調査箇所として次が挙げられています。
- 構造耐力上主要な部分:基礎、土台と床組、床、柱と梁、外壁と軒裏、バルコニー、内壁、天井、小屋組
- 雨水の浸入を防止する部分:外壁、内壁、天井、屋根
調査は原則として目視と非破壊検査で行われます。次のような部分は、標準の調査では分かりません。
- 給排水の配管や設備(対象外。オプションとして頼める場合があります)
- 敷地内の地中(基礎であっても、地中の調査は含まれません)
- 点検口が無い、家具が動かせないなどの理由で見られなかった箇所(報告書には「調査できなかった」と記載されます)
リノベーションを前提に買う場合、配管を新しくするかどうかは工事の金額に関わります。配管は標準の調査では対象外なので、オプションで頼めるか、工事を依頼する会社に別に見てもらうかを、あらかじめ考えておく必要があります。
買う側が頼むときの条件
建物状況調査は、中古住宅の売買で義務づけられているものではありません。行うかどうかは当事者が決めます。買う側が頼む場合の条件は、Q&Aで次のように説明されています。
- あらかじめ売主の承諾が必要です。仲介会社にその旨を伝えます
- マンションは共用部分も調査の対象になるため、管理組合の了承が必要です
- 費用は、依頼した人が負担するのが一般的とされています
- 仲介会社から調査をする人のあっせんを受けても、あっせん料を払う必要はありません
仲介会社は、媒介契約書に「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」を記載することになっています。あっせんをしない場合は、その理由も記入します。媒介契約を結ぶときに、この欄を見ておくと、その会社に手配を頼めるかどうかが分かります。
費用と時間の目安
Q&Aによると、費用に基準は設けられておらず、調査をする人によって異なります。そのうえで、標準的な検査内容の場合は「6万円程度から」が目安とされています。戸建てとマンションでは調べる部位や箇所の数が違うため、金額が変わることがあります。所要時間は、住宅の規模などによりますが「1〜3時間程度」と見込まれています。
これらは国土交通省が令和6年4月1日現在のQ&Aで示している目安です。実際の金額は依頼先の見積もりで確認してください。オプションの調査を足すと、その分が加わります。
いつ頼むか
調査の結果を、買うかどうかの判断や工事の計画に使うのであれば、売買契約を結ぶ前に結果が出ている必要があります。一方で、売主の承諾を得て、日程を合わせ、報告を受け取るまでには日数がかかります。気になる物件が出てから調べ始めると、間に合わないことがあります。
- 物件を探し始める段階で、仲介会社に建物状況調査の手配ができるかを聞いておく
- 気になる物件が出たら、売主がすでに調査をしていないかを仲介会社に確認する
- 調査が無ければ、買う側で調査したい旨を伝え、売主の承諾を得る(マンションは管理組合の了承も)
- 見積もりを取り、配管などオプションの要否を決める
- 結果の概要と報告書を受け取り、「調査できなかった」箇所が無いかも含めて読む
売主がすでに調査をしている場合、その結果の概要は、仲介会社が契約前に行う重要事項説明の対象になります。対象になるのは、木造の戸建てなら調査から1年以内、鉄筋コンクリート造などのマンションなら2年以内のものです(マンションの2年は令和6年4月1日から)。調査結果そのものに有効期限はありませんが、時間がたつほど、現在の状態とずれている可能性があります。
買う側が調査を頼んだあとで購入を見送った場合、結果の概要と報告書は、頼んだ人の手元に残ります。調査後の情報をどう扱うかは、あらかじめ売主と相談しておくよう、Q&Aは勧めています。
保険に入りたい場合は、頼む相手が変わる
既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅の売買のときに加入できる保険で、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分などに瑕疵が見つかったとき、補修の費用などが支払われます。
この保険への加入を考えている場合は、住宅瑕疵担保責任保険法人の登録を受けた検査事業者の検査員に調査を頼む必要があります。そうでない人に頼んだ調査は、保険の加入には使えません。あとから保険に入りたくなっても、調査をやり直すことになります。
- 結果に「調査できなかった」「劣化事象有り」の記載があると、そのままでは加入できません。再調査や、補修したうえでの再検査が必要になります
- 引渡しのあとにリフォームをする予定でも、引渡しの前に申込みと検査を済ませることで加入できる型があります
- 仲介会社などが独自に設けている保証は、この保険とは別のものです
加入の条件は保険法人ごとに定められています。詳しい条件は、各保険法人に確認してください。
この記事が当てはまらない場合
- 新築の住宅。建物状況調査の対象は既存の住宅です(人が住んだことのある住宅、または工事の完了から1年を過ぎた住宅)
- 店舗や事務所。店舗併用住宅の場合は、住宅に当たる居住部分が基本的な対象になります
また、調査で劣化が見つからなかったことは、不具合が無いことの保証にはなりません。調査は判断の材料を増やすためのもので、最終的に買うかどうかは、資金計画や工事の内容とあわせて決めることになります。
出典と、この記事について
制度の説明、費用と時間の目安、期間の数字は、次の国土交通省の資料にもとづいています(2026年10月11日に確認)。制度は改正されることがあります。契約の前には、最新の資料と仲介会社の説明を確認してください。
- 宅地建物取引業法における建物状況調査に関するQ&A(令和6年4月1日現在)国土交通省。Q1-1〜Q1-16、Q2-1〜Q2-8、Q3-1〜Q3-5、Q4-1、Q4-2を参照
- 既存住宅流通について(建物状況調査(インスペクション)活用に向けて)国土交通省。令和6年4月1日施行の見直しの内容
- 既存住宅状況調査技術者講習制度について国土交通省。調査をする人の情報
この記事には、広告主の商品やサービスへのリンクはありません。特定の調査会社や保険法人を勧めるものでもありません。